植物由来化学物質群と健康

      (この記事は、米国LPI社のヘルス・リサーチ・レビューを翻訳したものです。)



植物由来化学物質群と健康

  ファイトザイムについてもご参照ください。


 科学関係の諸学会では、数々の研究で発見された諸事実に基づき、予防可能な癌の70%、そして癌による死の30%が、食事にまつわる要素と関係がある、ということで意見が一致しています。食材の中には、発癌性があるものや、心臓血管系の病気を引き起こすもとになる、ということが明らかにされたものがある一方、実際に病気を防ぐ力があるということがわかってきたものもあるからです。

 癌や心臓血管系の病気を予防する効果の高い食材の代表といえば、野菜、穀物、豆類、大豆です。しかも、これらの食材には、体を守るビタミンやファイトケミカルズ(植物由来化学物質群)も豊富に含まれているのです。植物由来化学物質群というのは、植物の体内で生産されるさまざまな成分のことで、たとえば、いろいろな植物が持つ鮮やかな色、味、香りといった要素も、このような植物由来化学物質によるものなのです。色や香りを出す他には、植物体内やそれを食べた人間の体内で、抗酸化力を発揮したり、ホルモン様作用を示す成分もあります。「おおざっぱに言ってしまえば、要は、色の鮮やかな野菜や果物からつくられた食べ物をたくさん食べよう、ということです」メイン大学の準教授で哲学博士のメアリー・エレン・カマイアは、こう言います。

 「というのも、クロロフィル、カロチノイド、アントシアニディンといった天然色素が健康の役に立つ、ということがわかってきたからです。」植物由来化学物質には実にいろいろなものがある、ということがわかってくるにつれて、それらが健康に対してどういう効き目を持っているか、ということに対する認識も、どんどん新しく豊富になってきました。活性が高まると発癌物質の毒性を抑える酵素群、エストロジェンと類似の働きを持つ成分、動脈の内壁をなめらかで丈夫にすることによって、コレステロールの付着を防ぐ成分、などなどです。「野菜、果物、穀物、豆類の豊富な食事が、ある種の癌や心臓病やその他の慢性病にかかるリスクを減らす可能性が高い、ということを示唆する研究は、何百とあるんです。もっとも、具体的にどの植物由来栄養素がこのような予防効果をもたらすのかということになると、まだはっきりとわかっているわけではありませんがね。」カレッジ・パークにあるメリーランス大学の栄養食物科学学部の準教授である哲学博士、マーチ・A・カンターはそう言います。

 「果物や野菜の比率が高い食事を摂るのはいいことです。野菜や果物に病気予防効果があるという事実を示す研究は非常に多いですし、毎日、新しくそれを裏付ける事実が発見されて、この見方の正しさを後押ししてくれているのですから。」このアドバイスは、ニューヨーク・シティにあるニューヨーク大学の栄養食物研究学科で教師をつとめる哲学博士、マリオン・ネッスルからのものです。たとえばブロッコリ、カリフラワー、キャベツ、芽キャベツといったアブラナ科の野菜には、インドールという成分が含まれています。このインドールは、エストロジェンの過剰分泌を防いだり、癌誘発性の高いエストロジェンの性質を変化させたりすることにより、乳ガンのリスクを減らすだけでなく、他の癌のリスクも減らすのだそうです。

 カロチノイド群フラボノイド群というのは、ニンジン、カボチャ、トマト、ビーツ、サツマイモといった赤、オレンジ、黄色の野菜に豊富に含まれている成分です。

 天然のカロチノイドには、600以上もの種類があり、そのうち10%が、ビタミンAの前駆体として働きます。フラボノイド群のほうは、今日までに、ほぼ800種類が見つかりました。ところで、なかでもよく知られた数種類のカロチノイドには、心臓病、脳卒中、そして肺癌、乳癌、子宮癌、直腸癌、前立腺癌といったいくつかの癌を防ぐ効果があるのです。しかも、研究によれば、これらの植物由来化学物質群は、コレステロール値を下げ、免疫反応を高める効果も持っています。トマトにはリコピンが豊富に含まれていますが、この成分が、前立腺癌の発症率を減らすことも明らかになりました。カロチノイドの一種であるこのリコピンは、食事やサプリメントで摂ったときにのみ、体にいい働きをしてくれます。最近のいくつかの研究によれば、トマト・ペーストのかたちで食べると、いちばん多くリコピンを摂取できるということです。「リコピンについては、この他にも体によい点があるということを示唆する研究がたくさんあります。」アムハーストにあるマサチューセッツ大学食物科学学部の名誉教授、F・ジャック・フランシスはそう教えてくれます。それだけでなく「そのことが科学界で認知されているかどうかとなると、それはなんとも言えないところがありますがね。」と付け加えました。

 チオール群は、ニンニク、スカリオン(エシャロット)、リーク(長ネギ)、玉ネギ、アサツキといったネギ属から見つかる成分です。なかでもよく知られている2種類が、硫酸アリルと有機硫黄成分です。これら2つの成分は、コレステロール値を下げたり、血栓を減らしたり、なんらかの抗菌機能を発揮しているのではないか、と考えられています。

 テルペン群は---なかでも広く見られるのはリモネンという種類ですが、基本的に、レモン、グレープフルーツ、オレンジといった柑橘累の果皮の中に見つかる成分です。この植物由来化学物質は、肺の細胞を守り、腫瘍の成長を抑え、発癌物質の活性を奪います。多くの果物には、この他、石炭酸(フェノリック・アシッド)という名の植物由来化学物質も含まれています。イチゴやラズベリーの場合は、石炭酸の一種のエラグ酸が含まれており、タバコの煙のような発癌性物質によって引き起こされるダメージを減らしてくれます。また全粒穀物には、石炭酸(フェノール)類に加えて、ライガン(?)類、クマリン類、ファイトステロール(植物由来ステロール)類、それに蛋白質分解酵素抑制物質と、いずれもコレステロール値を低下させる成分が含まれています。最近の研究によれば、全粒穀物の豊富な食事は、細胞の突然変異を抑制する他、発癌性のエージェントが体内に侵入するのをブロックしたり、病気の進行を遅らせることができ、結果として癌のリスクを減らす、ということが明らかになりました。全米食餌療法学会は、食物中の特定の物質群をさまざまな食事にとりいれると、健康のためによい役割を果たしてくれる可能性がある、という立場に立っている学会です。「将来は」フランシスは言います。植物由来化学物質群を食用製品(サプリメントを含む)に取り入れる、ということが、栄養学上重要な意味を持ってくるではないかと思います。---工夫の余地は無限にありますからね。」

(フード・プロダクト・デザイン 1998年4月号より)

付記:LPI社は、可能な限り、自社が(権利・特許を)保有する独自のタブレット・ベースのファイトザイム(TM)を製品に取り入れています。



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