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●ダイエットで癌予防動物にカロリーの低い餌だけを与えていると癌にかかりにくくなり、寿命も伸びることは、10年以上も前から研究者の間で知られていました。 だが、どのようなメカニズムで癌細胞が抑制されるのかについては、これ までまったくわかっていなかった。 だが、その謎もついに解き明かされる日が来たようだ。全米環境医学研究所(NIEHS)がこのほど発表した研究報告によると、低カロリーの食事をとることによって、IGF-1(インスリン様成長因子-氈jというホルモンの血中濃度が下がり、腫瘍の成長が妨げられることが判明したからである。 ●癌の成長を促すホルモン NIEHSの研究者サンドラ・ダンによれば、IGF-1は、ヒト成長ホルモンの1種で、人間の体の長い骨の部分の成長を促すという。 今回の研究は、膀胱癌だけを対象にしているが、そこから得られたデータは、すべての癌にも当てはまるはずだ、とNIEHSの科学者たちは語っている。 医学専門誌『癌研究(Cancer Research)』に発表した論文で、ダンは次のように報告している。 膀胱癌にかかったネズミに与えるえさのカロリーを20%低くしたところ、IGF-1の血中濃度は24%も低下した。さらに驚くべきことに、その過程で癌の進行そのものもストップしてしまったのだ。 だが、これだけでは、IGF-1と癌の進行に直接の因果関係があるかどうかはわからない。 つまり、膀胱癌にかかったネズミの体内で、腫瘍の成長に歯止めがきかなくなったり、癌細胞が転移したりするのは、IGF-1の作用にほかならないことが確認されたのである。 人間の癌細胞には、p53という癌抑制遺伝子が欠けているケースが多い。 これなら、人体実験をしなくとも、人間の癌のメカニズムにかなり食い込むことができる、とダンは考えたわけだ。 問題は、こうして得られた知識をどのように応用するかだ。ダン自身は、IGF-1の血中濃度を低く抑えるような経口薬を開発すれば、ぼうこう癌だけでなく、あらゆる種類の癌の成長を阻むことができると考えている。 ところで、低カロリーの食事を続けていると、老化の進行が遅くなるらしいことも知られている。 ●18を過ぎてぶくぶく太ると乳癌になりやすい とにかく、太っているとろくなことはない。 ハーバード大学公衆衛生大学院のジピン・フアン博士によれば、閉経(年配の女性に月経がなくなること)後に乳癌になった女性の6人に1人は、若い頃に体重に気をつけてさえいれば、癌にかかるのを防げたかもしれないという。 フアン博士が利用したのは、現在も進行中の「看護婦健康調査プロジェクト」から得られたデータだ。 フアンは、9万5256人の女性から得たデータを調べ、閉経後の乳癌の33%は、体重増か女性ホルモンのエストロゲンの使用、あるいは両者の組み合わせに原因があることを突き止めた。 女性ホルモンのエストロゲンは、更年期障害の治療に使われることが多い。 データでは、2517人が乳癌にかかっており、そのうち1517人は閉経後の女性だった。フアンが全米医学会誌に発表した論文によれば、閉経後と閉経前では、肥満や体重増が乳癌に及ぼす影響は異なっているという。 ●エストロゲンと乳癌の関係 閉経前の場合、太った女性は標準的な体型の女性より、かえって乳癌にかかる確率は低かった(しかし、その他の病気を含めた死亡率全体では上回っていた)。 18歳をすぎてから20キロから25キロ程度体重を増やした女性は、体重の増加を2キロから3キロ以内に抑えた女性と比べると、乳癌にかかる確率が40%も高かった。 エストロゲンを使用したことがない女性の場合、体重増と乳癌の因果関係はもっとはっきりと表れた。 一方、エストロゲンによるホルモン療法を受けている女性の場合、かなり体重を増やしても乳癌のリスクはかえって低くなっていた。 エストロゲンには、乳癌を促進する作用があるので、これはある意味で意外な結果だったと、フアンは語っている。 これまでにも、成人の体重増と乳癌の関係を調べた研究はあったが、これほど大規模な調査は初めてである。 こうしたメカニズムが完全に解明されるのは、まだ先の話だろう。だが、少なくともこれで、女性が理想的な体型を維持したがる理由がまた1つ増えたと言えそうだ。 |